スティーブン・ソダーバーグ(Steven Soderbergh)監督の『トラフィック(Traffic)』2000年のアメリカ映画です。
当サイト一番のお勧め映画『エリン・ブロコビッチ』と同じ年、同じ監督による作品ですが、こちらはアカデミー賞4部門を受賞しています。
スティーブン・ソダーバーグの何がすごいといって一言でいうなら、「出てくる人物が全部リアル!」というところでしょう。『エリン・ブロコビッチ』でもそうでしたが、端役にいたるまで、どの人物もどの人物も、みんなひとりひとりが生きてるんです。目の動きひとつで、その人物がどんな性格なのか、どんな立場にあるのか、どんな考え方で生きているのかということまで、果てしなく奥深く想像させてくれます。
試しに、端役で登場しているアルバート・フィニー(Albert Finney)を 『エリン・ブロコビッチ』と比べて見ればわかります。『エリン・ブロコビッチ』では準主役的にフルに登場しているフィニーですが、まるで同一人物とは思えません。特にその性格と人物の背景がそれぞれで全く異なりますから、メイクで差をつけているわけでもないのに、全然別の人物として、両方の映画でしっかり生きています。また、薬物中毒の高校生を演じたエリカ・クリステンセン(Erika Christensen)も、痛々しいまでにリアルでした。筆者もちょうど同じ年頃の娘を持つ立場になって改めてこの映画を見ると、クリステンセンの演じた女子高校生が、クリステンセンという若い女優ではなしに、登場人物のキャロラインとして実在しているとしか思えないことに驚きます。
これは本当に、なかなかできることではありません。特に日本映画が最も苦手とする部分でしょう。歌舞伎などの役者の伝統が強いせいだと思いますが、日本映画に登場する俳優、女優というのは、登場人物になりきるのが非常に苦手で、どうしても役者本人の個性が前に出てきやすいという欠点があります。
日本でも「役になりきる」とか、「真に迫った演技」だとかいった褒め言葉があるにはあるんですが、ハリウッド映画もソダーバーグ級の名監督の作品と比べてしまうと、はっきりと雲泥の差があることを認めないわけにはいかないでしょう。いくら日本映画びいきのファンや評論家でも、そこに異論はないはずです。
この名作『トラフィック』では、もし観客が登場人物を演じた俳優たちを知らなければ、ドキュメンタリーではないかと錯覚するはずです。しかも、本当のドキュメンタリーよりもさらにリアルで、リアルさゆえの怖さがひしと伝わってくるのです。
ほぼ主演といってよいところに、ベニチオ・デル・トロ(Benicio Del Toro)がいます。筆者はこの映画で初めて彼を知ったんですが、アカデミー助演男優賞に輝いた彼の演技力がすごいのはもちろんなんでしょうけれども、彼の演じるロドリゲスという人物を、銀幕を超えて実在させてしまったかのようなソダーバーグの力量は想像を絶しています。
DVDは入手しづらくなっています。発売されたのは公開直後ごろでしょうか。今手にはいるとしても、CDケースに入った古いDVDのみのようです。ちょっと価格も高いですね。
2008/12/29
スティーブン・ソダーバーグ監督の『トラフィック』
ラベル: ドラマ
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